緑ヶ丘美術館・本館
緑ヶ丘美術館・別館
透き通るような⽩磁に、花弁がやわらかく浮かび上がる。彫りの陰影と表情豊かな藍のグラデーションが麗しく調和する。藍色と灰⾊、そして緑、それだけで植物の鮮やかな⾊彩まで感じさせる。⽣まれ故郷である奈良の地で、陶芸家・本多亜弥はモダンなデザインに加えて技法や⾊の開発に挑み、「染付」の美しい藍の世界に、独⾃の新しい⾵を吹き込んできた。
陶陶(ようよう)とは「和らぎ、楽しむ」。その⾔葉通り、本多は「染付」の伝統と未来を颯爽と牽引していく作家なのだろう。
伝統⼯芸の魅⼒を多くの⽅々に伝え未来へ継承する、緑ヶ丘美術館開館5周年の節⽬にお届けする展覧会。ぜひご高覧ください。
自らロクロを挽き成形する本多の器は、優美でありながら軽やかな佇まいだ。丸みをカットしたりそれぞれの辺の長さを変えたりと、「こうしたら面白そう」と自由に発想しながら、滑らかで端正な形状に動きを出していく。高い成形技術とその遊び心が器に独特の存在感を与えている。
そうして生まれた器体に、和の植物が巧みな構図で配置され調和する。ときには蔓の動きに焦点を当て、ときには花の力強さを際立たせ、ときには花と葉が重なり合う奥行きの妙を描く。具象で描かれた花に、直線で描く抽象の葉を組み合わせるなど、表現の変化にも挑んでいる。
本多が器に描くのは、絵付けの植物だけではない。自分らしい表現を追求するなかで、「幼い頃に楽しかった」というレリーフを取り入れ、生み出した技法「染付彫」。葉脈の削りや、花弁や葉を滑らかに彫り上げ、そこにわずかに呉須を擦り込むことで、磁肌と微妙に異なる白い陰影がやわらかく浮き上がり、藍を引き立たせる。
そして、繊細で麗しい表現力に富んだ藍のグラデーション。数種類の青と灰色は、芸大時代から呉須の調合・実験を繰り返し、研究を重ねてきた。野葡萄や青紅葉などを描く際は、そこに独自に開発した緑も加わる。青、灰色、緑の3色の藍だけで、見る人によって植物の多彩な色を想起させるのだ。
絵付けはまず、濃筆(だみふで)にたっぷりの絵の具(呉須)を含ませ、絞り、絵の具の水滴を器に落とす。筆先で絵の具を転がすように動かしながら、器の角度を巧みに調整し、絵の具を溜める。絞っていた指を離すと、筆が余分な水分を吸い取り、絵の具が素地に落ち着く。その上に、さらに別の絵の具を重ねることもあり、色や表情の多彩なバリエーションを生み出している。
緑ヶ丘美術館でのみの限定販売となります
<数量限定>一筆箋 30枚綴り 2種
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各 500円
<数量限定>レターセット 封筒3枚・便箋10枚組 3種
販売価格
各 1,000円