緑ヶ丘美術館・本館
緑ヶ丘美術館・別館
陽の光を浴びて流れる⽔、その⼀瞬を切り取ったかのような透明感。きりりと隙のない佇まいには秘めたるエネルギーの奔流が⾒え隠れし、波⾳を⽴てながらあたりの⽔を深淵へと引き込む海峡の渦のように、⾒る者の意識を引き込んでゆく。
樋⼝邦春が⽣み出すのは、透き通るような⾊合いと深いグラデーションを持つ⻘⽩磁だ。ひと処にとどまらず変化を続ける潮の流れを作品へ映す、繊細さと⼒強さを併せ持っている。
モチーフは⻘年期に親しんだ瀬⼾内、鳴⾨の海。⽣命を宿すかのように絶え間なく変化し、流れ続ける⽔の姿。不安定で、だからこそ可能性に満ちていた⻘年期に眺めた奔流は、時を経て彼の脳裏に甦り、創作の核⼼となっているのだ。
絶え間ない潮流は、少しずつ形を変えつつ伝わる「伝統」の姿でもある。歴史ある⻘⽩磁の世界で未来を⾒据える樋⼝邦春の、際⽴つアイデンティティの形をぜひ、ご⾼覧ください。
作家の作品には、その⼈物の根幹となるものが反映されます。
透き通るような⻘⽩磁の⾊と緊張感ある形、淡麗かつ繊細なグラデーション、渦巻く流れを模した独特のデザイン。作品を⾒ればすぐ、それが樋⼝先⽣のものだとわかります。
樋⼝先⽣が鳴⾨海峡の潮流をその創作の核に据えられたのは10年余り前。⾃分にしかできない作品づくりを模索し葛藤されていた頃のことです。陶器から磁器へ、別⼈のように変わった作⾵。真摯に作品と⾃分⾃⾝に向き合ったその時、先⽣の胸に甦ったのは、⻘年期に親しんだ鳴⾨海峡の荒波だったと⾔います。
陶芸家を志し、⾜を踏み⼊れた若かりし頃、まだ何者でもない⼰に不安を抱きながら眺めていた激しい流れ。⽬に映る流れに投影したもの。ままならぬ⾃分への⻭噛みしたくなるような悔しい思いは、飽くなき向上⼼と創作意欲として、作家・樋⼝邦春の中に⽣き続けていたに違いありません。だからこそ、その思いが時を経て作品として、圧倒的な個性、アイデンティティとして形になったのです。
「その完成はまだこれから」と樋⼝先⽣は語られます。完成形は、⼰の⼼に渦巻くものを突き詰め磨き上げたその先に待っているのでしょう。そして、⻘⽩磁の⻑い伝統の中に「樋⼝邦春」という偉⼤な⾜跡を刻んでいくことになるのです。
この展覧会では、その半⽣を彩る作品たちを、樋⼝先⽣の原点、⼼の原⾵景と共に追っていくことにいたします。
緑ヶ丘美術館 館⻑ 菅野⼀夫
緑ヶ丘美術館でのみの限定販売となります
<数量限定>一筆箋 30枚綴り 2種
販売価格
各 500円
<数量限定>レターセット 封筒3枚・便箋10枚組 3種
販売価格
各 1,000円