緑ヶ丘美術館・本館
緑ヶ丘美術館・別館
丹波焼発祥の地、丹波⽴杭に⽣まれた今⻄公彦は、
古丹波に魅せられ、その根源的な美の探求に挑む陶芸家だ。
⼭を歩き、⼟を掬い、800年前の窯跡で問いかけ、妄想する。
「なぜここで、このように焼かれたのか」
平安時代末期、今も謎の多い丹波焼の起源に残された刻画⽂陶器、
それは愛する者を弔うために造られたのではないか。
天に祈り、無⼼に焼かれた陶器だけが持つ美しさを求めて、
窯というタイムトンネルをくぐり、古の陶⼯たちに⾃らを重ねる。
経験と技が無意識のうちに、この地の⼟と⽕に導かれて、
”丹波でしか⽣まれない“必然の美が現れる。
それは800年続く、丹波の⾃然と⼈の⽣の痕跡、
そして現代の陶芸家である今⻄公彦の感性の痕跡だ。
源流の再⽣から⽣まれる丹波焼の新たな景⾊をご⾼覧ください。
丹波焼は、越前焼・瀬⼾焼・常滑焼・信楽焼・備前焼とともに「六古窯」とも呼ばれています。これは中世に創業し、現代まで途絶えることなくやきものを作り続ける代表的な産地の総称です。
丹波焼は平安時代末期に創業し、室町時代の頃のいわゆる中世の古丹波は、⽳窯で焼かれ⾚褐⾊の肌にビードロと呼ばれる緑の⾃然釉が流れる、焼き締めの陶器です。江⼾時代に⼊ると⼭裾に登窯が築かれ、釉薬をはじめ多様な装飾技法を取り⼊れながら、⾚⼟部や⽩丹波など、独⾃の⽣活の器が⽣産されました。変わりゆく⼈々の暮らしとともに進化してきた丹波焼は、「丹波七化け」という⾔葉が⽣まれるほど多様性を帯びたやきものです。
初めて今⻄公彦先⽣の丹波⼤壺を⽬にしたときの驚きは今も忘れません。灰が降りかかり⾃然釉と⼟味による景⾊が古丹波の美を感じさせつつ、特徴的な⼝造りや胴がしっかりと張ったフォルムなど、独⾃の感性と技術による造形が圧倒的な存在感を放っていました。しかも若い作家がこのような作陶をしているのか、と興味が尽きませんでした。
今⻄先⽣は丹波焼窯元の次男としてお⽣まれになりましたが、丹波を離れ京都へ修業に出られます。そこで⼟作りや薪窯の焼成を学び、作陶のスタンスが築かれたようです。当時、備前焼など他の産地にも⼼惹かれていたと語っておられますが、丹波に戻り30歳で独⽴されました。そこにはやはり、故郷である産地への愛情が⼼の奥底に息づいていたのでしょう。
現在の丹波にはさまざまな作⾵の陶芸作家がいるなかで、今⻄先⽣は⼀線を画し、丹波焼の源流を探究されてきた唯⼀の作家です。来る⽇も来る⽇も⼭を歩き、古窯跡を訪れ、⼟を探す。丹波焼が誕⽣した時代的背景を考察し、⼈々の精神に共感し、陶⼯たちが直⾯したであろう困難を共有する。
そして辿り着いた新しい物語が、今回ご覧いただく『祈 時を超え、つながる「痕跡の美」 丹波 今西公彦展』なのです。今西先生の源流を探究する活動の集大成が、丹波焼の新たな可能性と未来を提示してくれます。
情報が溢れ、何でも簡単に手に入るようになった反面、人と人、人と自然の繋がりは希薄になり、多くの窯業地で「産地の力」が弱くなっていると感じます。今西先生のように産地の源流を辿り、その価値や魅力を問い直し、そこから新たな作品を生み出していくことは、産地の生命力を取り戻す大切なステップです。その活動を私たち美術館が応援することは、陶芸界の未来にとっても重要な意味があると確信しています。
緑ヶ丘美術館 館⻑ 菅野⼀夫
緑ヶ丘美術館でのみの限定販売となります
<数量限定>一筆箋 30枚綴り 2種
販売価格
各 500円
<数量限定>レターセット 封筒3枚・便箋10枚組 3種
販売価格
各 1,000円