緑ヶ丘美術館・本館
緑ヶ丘美術館・別館
草⽊の灰が窯の熱により⼟と反応して釉となる。
その⾃然素材が織りなす神秘的な現象に魅了された「灰釉」作家・⽷井康博が、
灰による焼成表現の可能性と、奈良の地でしか成し得ない新たな表現に挑む。
奈良の陶芸家・⽷井康博の作陶⼈⽣は⼀本道ではない。
本流は、⽊や藁など植物の灰を操り⽷井流に変化させる「灰釉」。
それと並⾏し、理想のデザイン性を模索しながら様々な技法を試みるもう⼀本の道からは、
奈良の古代ロマンを現代的フォルムで表す「倭(やまと)」が誕⽣。
その探究⼼が本流「⽷井の灰釉」も変化させ、
⽩上絵を施したガラスのような「硝彩」へと進化した。
どちらにも通底する⾃然素材への憧憬が新たな表現の世界へと突き動かしていく。
作陶初期から最新作まで20年の軌跡が⼀堂に会する作品展。
⽷井康博の挑戦をぜひご⾼覧ください。
⽷井康博先⽣は、⽊や藁など植物の灰を釉薬に⽤いて焼成表現する「灰釉」を中⼼に作陶する作家です。奈良県王寺町に⼯房を構え、2002年に⽇本伝統⼯芸展初⼊選以降、連続して⼊選され、その評価を着実に⾼められています。2021年の第50回⽇本伝統⼯芸近畿展においては「硝彩器」で奈良県知事賞を受賞され、その年の秋に当館で開催しました『《万葉の⾥・麗しの陶》奈良・四⼈展』にもご登場いただきました。奈良の地で20年磨き上げてきた技法の結実とも⾔えるのではないでしょうか。
⽷井先⽣は⼤阪芸術⼤学で建築を学ばれていた頃に陶芸と出会い、「灰」という⾃然素材が⽣み出す美の魅⼒に引き込まれました。そして⼤学在学中に、天⽬釉の作陶で著名な鎌⽥幸⼆先⽣の指導を受け、陶芸の道へ進まれます。⼤学卒業と同時に京都府⽴陶⼯⾼等技術専⾨校へ通い、ろくろをはじめ作陶技術を学び、卒業後は京都で清⽔焼の職⼈の仕事に就きました。その後、灰釉の作陶をされる猪飼祐⼀先⽣に師事し、修業する中で「作品とは何か、作品には⾃分⾃⾝が現れる。だからこそ⾃分という⼈間を磨かねばならない」と、陶芸だけでなく⼈としての成⻑が⼤切であることまで教わったと語っておられます。この教えが⾃⼰表現の追求とたゆまぬ変化への挑戦の源になっているのかもしれません。
やきものの歴史を遡れば、古代、窯の発達とともに⾼温での焼成が可能になると燃料の薪の灰が器に降りかかり、素地の成分と反応して釉化した「⾃然釉」が現れます。「灰釉」は、この「⾃然釉」を敢えて⼈⼯的に調合して作り出したのが始まりで、本格的な施釉陶器の原点とも⾔えるでしょう。⾃然素材ならではの温もりのある味わい深い釉調が特徴ですが、⽷井先⽣は釉が⾃然と描き出す表情をデザインとして⾼め、作家としての独⾃性を追求しています。そのため、本流である灰釉の世界の外にまで探求の⼿を伸ばし、さまざまな技法を試みながら⾃⾝の表現を模索し続けています。現在はその中から、より奈良を意識した作品である「倭(やまと)」シリーズも⽣まれました。奈良の歴史を象徴する遺跡の出⼟品に着想を得て、新たな技法にチャレンジしながら現代的な意匠へと昇華させ、独特の存在感を持った作品となっています。そしてまた、その探究の精神が灰釉にもさらなる変化をもたらし、上絵を⽤いた「硝彩」へと進化したのです。造形と表現⼒が⾶躍するごとに、灰釉という主旋律と調和して新たな世界が広がっていく。灰釉作家として進化していく過程を、我々は今まさに眼前にしているのです。そして今後どれだけの変化と進化を⾒せてくれるのか、ますます期待したいと思います。
今回は作陶初期の作品から最新作までを⼀堂に展⽰し、探究の軌跡を俯瞰してご覧いただくことで、「⽷井の灰釉」の魅⼒がより伝わる作品展となっております。これまで世に発表されていない貴重な作品もございますので、ぜひお楽しみください。
緑ヶ丘美術館 館⻑ 菅野⼀夫
緑ヶ丘美術館でのみの限定販売となります
<数量限定>一筆箋 30枚綴り 2種
販売価格
各 500円
<数量限定>レターセット 封筒3枚・便箋10枚組 3種
販売価格
各 1,000円