緑ヶ丘美術館・本館
緑ヶ丘美術館・別館
YASUDA Naoko
茶の湯。それは⼈と⼈をつなぐ、もてなしの美。
その美しい⽇本の⼼を映し出す道具が、茶陶である。
古今の陶芸家たちが、古典を仰ぎ、未知の扉を開き、
理想の茶陶を探究しながら、作陶に挑んできた。
そして、新たな時代を迎えた今、
現在の15名の作家による茶陶が⼀堂に会する。
⼟を⽣かし、やきものの根源的な⽣命⼒を引き出す造形や、
伝統の技法に、斬新な感性と表現を纏わせたアートなど。
各々の道があり、問いがあり、答えはみな違う。
この多様性こそ、新しい茶の湯の⾵景そのものではないだろうか。
茶陶の未来が⽣まれる瞬間を、ぜひご高覧ください。
新年あけましておめでとうございます。
新春1回目の展覧会は、「現在ノ茶陶 水指ト茶碗テン15」で幕を開けます。
「現代」ではなく「現在」と銘打つことで、「今という瞬間」にフォーカスした今回の展覧会。
当緑ヶ丘美術館所蔵の水指・茶碗の中から、「今ここに在る存在理由は何か」を考えていこうと思います。
一期一会の精神で心を通わす茶の湯は、亭主が茶陶に自身を映し出し、客人は茶陶を通じてそれを感じとる場と言えます。ここに集う15名の作家は各々にその美意識を、水指と茶碗を介して表現し、想いを造形に移しました。
備前や丹波など、やきものの里で土とともに伝統と革新に挑んだ作品。釉薬を突き詰め、炎と格闘し、窯から現れる器に
理想の景色を追い求めた作品。斬新な技巧を凝らした文様やモチーフに、自らの感性や世界観を投影した作品。
作陶地や技法、考え方も異なる15名の作家がそれぞれの現在を表現した茶陶は、従来の茶の湯の概念にも縛られず、だからこそ私たちと自由につながることができるのではないでしょうか。
作家の想いと皆様の心が通うことで、今を生きる自身を見つめるきっかけとなり、そこから多様な未来が生まれていく。
そんな「茶の湯の新しい風景」を、この会場で体感していただければ幸甚です。
令和4年1月 緑ヶ丘美術館 館長 菅野一夫