ヨーロッパ映画ポスター展野口久光の世界

2020712日(日)〜830日(日)まで

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グラフィックを一枚の絵画へ昇華させ
戦前戦後を彩った娯楽アート

戦前戦後から映画ポスターというジャンルを超え、娯楽アートとして現代に多くの作品を遺した野口久光。

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この度の緑ヶ丘美術館・本館の【ヨーロッパ映画ポスター展「野口久光の世界」】と
緑ヶ丘美術館・別館の【緑ヶ丘美術館コレクション「特別名作展」】は
8月30日(日)をもって終了いたしました。
今回の展覧会では、新型コロナウイルス感染拡大防止を最優先としまして、
入館時の体温計測や、ご連絡先確認のための入館カード記入など、ご来館者の皆様には
感染防止にご協力いただきありがとうございました。
お蔭さまをもちまして、ご来館者様及び当美術館スタッフにおきましては未だ感染者の発生も
報告されておらず、無事に今回の展覧会が終えられましたことを嬉しく思っております。

8月31日(月)~9月26日(土)までは次回作品展準備のため休館とさせていただきまして、
9月27日(日)からは【九谷色絵磁器「三代 浅蔵五十吉 展」】を緑ヶ丘美術館・本館で、
また、【九谷色絵「山田義明 作陶展」】を緑ヶ丘美術館・別館で開催いたします。
ご来館者の皆様には引き続き新型コロナウイルス感染拡大防止にご協力いただきまして、
次回の展覧会でもお目に掛かれることを楽しみにしております。

緑ヶ丘美術館・本館
緑ヶ丘美術館・別館

野口 久光

のぐち ひさみつ 明治42年8月9日生〜平成6年6月13日没
映画、ジャズ、ミュージカル評論家。画家。グラフィックデザイナー。


野口久光は1933年(昭和8年)、東京美術学校(現・東京藝術大学)図案科卒業後、欧州映画の輸入配給会社である東和商事に入社し、輸入映画のポスターを制作。1942年(昭和17年)太平洋戦争の末期に国の臨戦体制の影響で東和商事は解散したが、戦後1951年(昭和26年)新たに発足した東和映画株式会社宣伝部に再入社した。
ヨーロッパ映画を中心に生涯で1000点以上の映画ポスターを手掛け、グラフィックデザイナーのほか、音楽や舞台評論家としての顔もあわせ持ち、その幅広い知識とセンスを生かした斬新なデザインポスターは多くの映画ファンを魅了した。フランソワ・トリュフォー監督の映画「大人は判ってくれない」のポスターをはじめとして、米国ハリウッドとはまた一風異なる、ヨーロッパ映画ならではの洗練された雰囲気を、絶妙な色彩感覚や作品ごとに異なる手描き文字のレタリングで紙上に再現した。芸術的見地からいっても、野口の作品群は単なる映画ポスターの枠を超え、一枚の絵画にもたとえられるほどの高い評価を受けた。

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  • images「THE LOUIS ARMSTRONG ALL STARS」
    音楽ジャケット
  • images「にんじん」
    仏国 映画制作年1932年 日本公開年1934年
  • images「ノートルダムのせむし男」
    仏国 映画制作年1956年 日本公開年1957年
  • images「リチャード三世」
    英国 映画制作年1955年 日本公開年1956年
  • images「居酒屋」
    仏国 映画制作年1956年 日本公開年1956年
  • images「天井棧敷の人々」
    仏国 映画制作年1945年 日本公開年1952年
  • images「埋もれた青春」
    仏国 映画制作年1954年 日本公開年1955年

野口久光氏は戦前、戦後を通じて生涯1000枚以上の映画ポスターを手掛けた巨匠です。
戦前の「にんじん」「どん底」「望郷」、戦後の「赤い靴」「第三の男」「天井桟敷の人々」「禁じられた遊び」「居酒屋」「旅情」「大人は判ってくれない」等、これらの名作映画のポスターは全て彼の手で描かれたものです。又、彼の才能はポスターだけにとどまらず、ジャズ評論家、映画評論家、映画プロデューサー、舞台演出家であり、さらにグラフィックデザイナーとしてレコードジャケット、ビデオパッケージ、雑誌の表紙、著書出版など多彩な才能を発揮したのです。
戦前戦後を通じて野口氏が入社した東和商事(映画配給会社)という会社は、ヨーロッパの生きた文化やその芸術性を日本中にしみこませ、日本の芸術家たちはそのヨーロッパの品格に酔いしれたと言われており、野口氏は日本映画のポスターもヨーロッパの色調、香りをいかに表現するかを、印刷会社の協力を得て独特のカラーを確立、格調高い作品に仕上げていきました。

さらに洗練されたレタリング技術を生かし、名コンビである筈見恒夫はずみ つねお氏(東和の先輩であり、コピーライターの先駆者)とともに東和映画、ヨーロッパ映画の独自色を確立しました。この様にして単なる映画の宣伝材料であるポスターを芸術の世界まで引上げていくことになったのです。
野口氏の作品にはそれぞれの映画に対する“愛”が溢れています。一本一本の映画を愛し、その映画の“心”を的確につかみ、ムードや魅力を一枚の絵画ポスターに表現し、いくつもの名画を生み出してきました。
戦前戦後、日本が憧れたヨーロッパ映画全盛期の独特の空気感、野口芸術の香りを感じとってください。