金銀の箔の層が磁胎の質感と一体となって深い煌めきを生む、高橋朋子の「金銀彩」。
幾何学的な文様が刻む視覚的なリズムは、心象の月や星の光が降り注ぐ動きを表現した。
生まれ育った北海道の原風景や、移ろう四季の美しさと厳しさを感じさせてくれた自然への畏敬の念が感性の源となる作品は、モダンさとともにノスタルジックな温もりも漂う。
彩度や厚みの異なる箔の重ね方や焼成の研究、さらに金属箔が釉薬と反応して黒や緑に発色する特性を活かすなど、独自の技法を追求し、自らの世界観に伴う表現力を磨いてきた。
そして近年、独創性あふれる「金銀彩」を開花させ、ひときわ注目を集める高橋朋子のまさに「今」を凝縮した展覧会。
ぜひご高覧ください。
古来、金銀の煌めきは人々を魅了し、時には崇拝の対象として尊ばれてきました。陶芸では、金銀の箔·泥·液で器を彩る装飾技法を金彩·銀彩と呼び、華やかに輝くものや仄かに光るものなど、さまざまに私たちの目を楽しませてくれます。その中で、モダンでありながら温もりのある独自の「金銀彩」を制作する高橋朋子先生は、いま陶芸界でも大きな注目を集める作家の一人です。
現在、千葉県八街市で作陶する高橋先生は、北海道で生まれ育ち、沖縄の沖縄県立芸術大学で陶芸を学びました。そこで金彩技法の一つである「釉裏金彩」を教わります。「釉裏金彩」とは、文様の形に切り取った金箔を磁胎に施し、その上から透明の釉薬を掛けて焼き上げる技法。高橋先生は20代の期間、その研究に打ち込みました。しかし、すでに大家によって確立されていた技術·表現を追い続けることに疑問が生じ、より自分らしい表現を追求する道へと、新たな扉を開くことを決意されたのです。金銀の箔に白磁そのものの質感を組み合わせることに魅力を見出すと、それまでに学んだ知識や技術をベースにしながらも、素材や釉薬の調合、箔の扱い方、焼成方法など試行錯誤を重ねていきました。
次第に特徴的な幾何学文様が美しく整理され、意匠と造形の調和が進化していきます。金と銀以外にも、金属箔を用いて黒や緑に発色させる方法や、染付の呉須を吹き墨で掛けて作った下地に銀彩を組み合わせる「蒼掌」など、はじめは完成に至らなかったさまざまなアイデアも、技術を磨き経験を積み上げることで独自の技法へと昇華。金銀の光彩とともに、作品全体が一層奥深い趣を纏うようになりました。「この数年、自分の納得できる作品が作れるようになった」とご自身でも語るように、独特の感性がもたらす心象の世界が器の上で見事に現出し、今まさに我々の眼前に唯一無二の「金銀彩」が花開いているのです。公募展などでも数々の受賞を重ね、2024年には日本伝統工芸展においてNHK会長賞の受賞を果たされました。
この度、満を持しての開催となりました『Moon Pavilion 光の詩を刻む 高橋朋子』。まさに高橋先生の「今」が凝縮された展覧会です。タイトルにある「Moon Pavilion」は高橋先生の代表的なシリーズの一つでもありますが、今回、その世界観のルーツに通じるモンゴルを訪れ、撮影を行いました。大草原で馬や牛と触れ合い、冴え冴えとした夜空を明るく照らす月を眺め、ゲルでの宿泊も体験された高橋先生。当美術館ではその様子を収めた映像も常時上映しておりますので、展示作品とともにぜひご鑑賞ください。
緑ヶ丘美術館 館⻑ 菅野⼀夫
緑ヶ丘美術館でのみの限定販売となります
<数量限定>一筆箋 30枚綴り 2種
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各 500円
<数量限定>レターセット 封筒3枚・便箋10枚組 3種
販売価格
各 1,000円