<没後10年>
人間国宝・三代 德田 八十吉 展
2019年9月8日〜12月22日まで
2019年9月8日〜12月22日まで
緑ヶ丘美術館
九谷伝統の色絵から敢えて離れ「色」と向き合った三代德田八十吉。
釉薬の表現を極め「彩釉(さいゆう)」を生み出し、さらに、
宝石のように光り輝く「耀彩(ようさい)」の様式を完成。
九谷の「色」そのものの可能性に挑戦した人間国宝作家。
菅野一夫 緑ヶ丘美術館 プロデューサー
2017年に緑ヶ丘美術館が開館してから満二年が経ちました。当美術館は、「芸術の原風景と出逢う」をコンセプトに、作品だけでなく、創作者である作家の内面にも触れていただける美術館が蒐集した作品を公開してまいりました。
展覧会ごとに、著名な名工や作家の先生方には、度重なる取材に快く応じていただき、心よりお礼申し上げます。私どもの美術館にとって、取材は命です。今まで知られることがなかった作家の素顔や創作秘話を肉声で聞き取り記録することは、芸術文化の理解に繋がり、次代への伝承の大事な手がかりになります。芸術を通して、日々の暮らしを如何に豊かで、価値あるものにするかを考えるきっかけになればと思います。小さな美術館のささやかな想いですが、少しでも皆様方と共有できれば幸いです。
開館以来三年目を迎え、この度、九谷焼名工の三代德田八十吉氏の彩釉作品を展覧いたします。三代八十吉氏は、初代八十吉氏を祖父に、二代が父という九谷焼名門の家に育ち、子供の頃から伝統的な九谷五彩の色絵に囲まれて育ってきました。自らも九谷焼を目指した時には先代の秘伝の色や技法を学び、腕を磨いてきました。時を経て、先代と違う独自の表現に目覚め、色と技法の研究から、ついに「彩釉」を発案。絵ではない色釉の新しい表現を編み出しました。絵付け表現の九谷焼に全く新しい色だけで表現する九谷焼が発現しました。
生前、三代八十吉氏が「耀彩」と命名した作品が、その完成形です。大胆なグラデーション、オーロラのような光、透き通る「色」の宇宙。類稀な情熱が生んだ光り輝く「耀彩」の世界。
その姿には、九谷が伝統として引き継いできた工芸、職人技としての風景は見当たりません。まさしく三代八十吉氏が、九谷焼をクラフトからアートへ昇華させた瞬間と言えるでしょう。九谷に新しい可能性を生み出した瞬間でもあります。
この功績が評価され、三代八十吉氏は、平成9年に国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。初代に次ぐ快挙です。
德田八十吉コレクションの中でも「サントリーウイスキー響35年・三代德田八十吉氏作「耀彩瓶 碧陽」は、サントリー株式会社が「サントリーウイスキー響」の35年ものを中味に、九谷伝統の色絵磁器作家・三代德田八十吉氏とコラボレーションした限定作品です。耀彩という独自の技法がウイスキーボトルに映し出されたその姿は実に美しい。
透き通った色の輝きを見るにつけ、このグラデーションが面相筆の繊細な線の並びで描かれていることは想像もできない。
器に描くための素磁がどれだけ完璧に研磨されているか、その制作の手間暇も労苦も微塵も感じさせない。精巧で完璧な制作作業があって初めて完成したのです。
德田家三代にわたって培われた三代德田八十吉氏の「JAPAN KUTANI」をじっくりと味わってみてください。
緑ヶ丘美術館では、三代德田八十吉氏、没後10年の節目としての展覧会となります。
そこで、生前、三代八十吉氏と親交が深かった九谷焼名工の方々に、在りし日の三代八十吉氏の素顔を語っていただきました。
色絵師:浅蔵五十吉氏、赤絵細描:福島武山氏、能美市九谷焼資料館館長の中矢進一氏です。
制作秘話、人柄など実話を記録し、「耀彩への道」人間国宝・三代 德田八十吉 没後10年記念誌にインタビュー記事を掲載しました。
また、作品とインタビューのビデオ映像は、当美術館でご覧いただけます。
ご協力賜りましたみなさま方に、心より感謝申し上げます。
緑ヶ丘美術館が所蔵の九谷焼作家によるお茶碗で、
お菓子とともに「お抹茶セット」をお楽しみいただけます。
受付にお申し出下さい。(1日20名限定)
一服 500円