緑ヶ丘美術館・本館
緑ヶ丘美術館・別館
陽と陰。火と水。
茶席で湯を沸かす釜と対に置かれる水指は、湯相を整え、茶碗などを清めるための水を貯える器。四季折々の趣と調和し、主客が心を交わすための大切な茶道具です。時代ごとに多種多様な水指を取り合わせた茶人たちと、各地の窯で創意と技法を駆使して挑んできた作家たちによって発展しました。今回は緑ヶ丘美術館のコレクションから、近現代の名匠たちの作品を展示。焼きの景色、豊かな造形、釉の装飾、鮮やかな色彩。先人の技を受け継ぎ、独自の息吹を纏わせ、それぞれの美を宿した名品の数々。清浄なる水器に心を澄ます悠久の時を味わいながら、時代が変われども魂に響き続ける「もてなしの美」をご高覧ください。
茶席に「水指」の名が登場したのは室町時代。唐物や南蛮物などの渡来品、信楽や備前など和物の中で、壺や甕、擂鉢、手桶など日常雑器を見立て、水指として用いたことが始まりだったようです。やがて、時代ごとに茶人たちの好みと卓越した審美眼によって、新たな茶の湯の潮流が起こっていきます。それを反映して、焼き締め陶の力強い焼きの景色と豊かな造形力にはじまり、釉薬や絵付けが見せる多彩な装飾性を備えたものなど、日本各地で、その産地ならではの特性を活かし、作家ごとの個性的な水指が生み出されてきました。
そのように何百年と愛され続けてきた茶陶、水指。現代の作家たちもまたそれぞれの地で、受け継がれてきた技を継承しながら、独自の美を追求して作陶に挑み続けているのです。その美は茶の湯の世界にとどまらず、もっと広く、多くの人々の心に届いています。
私には、それが時代の要請であるようにも感じるのです。茶席では主人がさまざまな趣向の中にメッセージを込め、客へのもてなしに心を尽くします。客は主人の所作や茶陶から、その心配りを感じ取るのです。人と人のつながりが希薄になった現代社会では、このような気持ちの交流はますます求められているのではないでしょうか。
どれだけ時代が変われども、互いを思いやる心と、それを造形の美で表した伝統工芸を鑑賞するひとときは、普遍的に人々の心に潤いを与えてくれるのです。
ぜひ、会場に並ぶ水指を通じて、作家たちとの心の交流をお楽しみください。
緑ヶ丘美術館 館⻑ 菅野⼀夫
緑ヶ丘美術館でのみの限定販売となります
<数量限定>一筆箋 30枚綴り 2種
販売価格
各 500円
<数量限定>レターセット 封筒3枚・便箋10枚組 3種
販売価格
各 1,000円